客間の明かり   桐生倶楽部拝見 「6号室」

2枚の絵に組み合わせの妙

 

 

 扉を開け、まず目に飛び込んでくるのは市松模様の暖炉であろうか。 暖炉、小机、そしていすの深い茶が 室内の空気を引き締めている。
 その6号室には、内田安彦がサメ 漁を描いた「海に生きる」が飾ら れ、海なし県の洋館に潮の薫りを運 んでいた。また、暖炉のかたわらには桐生出身の杉浦勝人が昭和初期を 思わせる町を描いた「淡曇りの町」 が。のんびり牛車が歩く町は桐生 か、それとも作者が移り住んだ横浜だろうか。
 桐生倶楽部の会報をひもとくと、 内田の故郷、銚子は太平洋戦争の空 襲で焼け野原となり、彼が桐生で個 展を開いた際、戦災を受けず、昔な がらの家が並び、自然に恵まれ、友 もいる桐生を「第二の故郷」と呼ん だという話が記されていた。
 同じ部屋に飾られた2枚の絵に組み合わせの妙を感じ、口元が緩んだ。(野)


【データ】桐生倶楽部=桐生市仲町二丁 目9の36 電45・2755、社員外でも 社員の紹介か、理事者の承認があれば有料で利用可能 6号室=定員15人。半日3400円、午前9時から午後5時まで 5200円、午後5時から9時まで4100円(冷暖房費、厨房〈ちゅうぼう〉 使用料など別途要)


「海に生きる」 内田安彦 画


「淡曇りの町」杉浦勝人画

 昔ながらの はえ縄漁法 で、海のギャンクといわれるサ メを捕らえ、水揚げする海の男 の勇壮な姿を描いた20号の油絵。ほの暗い背景とサメの白い 腹が対照的で、見る者に強い印象を残す。
 画家は子どものころから絵が 好きで、千葉大学を卒業後、2 度、渡欧し、絵の勉強に励んだ。 郷土を中心に、広大な海の顔や 変化に富んだ大空、海辺の風物を描いた。

 

h21.5.13桐生タイムス記事pdf